…何やら科学などと偉そうなタイトルをつけていますが、今年のつくばマラソン参加案内に書かれていた今回大会のテーマが「マラソンを科学する」でした。
つくばマラソンは昨年の2015年大会から珍しいウェーブスタートを新たに導入し、今年も給食を急に血糖値を上げないものにするなど、工夫をこらした運営がされています。
個人的に興味があったので、公表されている全完走者のタイムをExcelで集計してグラフで表しました。科学と言えるほど高度な分析には至りませんでしたが、今年の大会テーマにあやかってつけたタイトルなのでご了承ください。豆知識としてお読み頂ければ幸いです。
なお、大会当日の完走記はこちらをご覧ください。
完走タイム別の人数
まず、完走者全員を完走タイム別に集計した結果を円グラフで示します。
全完走者のタイム別割合(2016年) |
完走者の約半数がサブ4(4時間未満)でゴール。そのうち、サブ3.5、サブ3.15、サブ3とタイムが短くなるにつれて、ランナーの数がほぼ半減している様子がわかりました。
一般的にサブ4、サブ3.5、サブ3.15、サブ3という分け方をされることが多いですが、集団の構成比から考えてこの区分の仕方は的を得ているようです。
次に、完走者の人数を5分刻みで集計しました。
全完走者のタイム別人数(2016年) |
このグラフから見えるのは、サブ3・サブ3.5・サブ4と区切りになるタイムの直前5分間に駆け込むランナーが多いことです。
また、ご自身の完走タイムと比較してみると、その時間帯はコースがどの程度混雑しているのかも把握できます。棒の長さが、そのまま混雑具合の指標になります。
例えば、3時間10分~3時間15分は341人ですが、2時間45分~2時間50分になると113人に減ります。私の経験として、2014年に3時間14分で走っていた頃と比べ、2015年に2時間48分で走ったらコース上のランナーが激減したように感じましたが、実際に約1/3に減っているようです。
サブ4以降はほぼ時間帯ごとにランナーの数が均等ですが、5時間を過ぎると急に減ることがわかります。マラソンに出場してまず完走を目指す人は、5時間以内を目標にする人が多いのではないでしょうか。
サブ3ランナーの内訳
サブ3ランナーとしては仲間の内訳が気になったので、先ほどのグラフで3時間以内の部分を拡大してみました。人数は1分刻みで集計しなおしています。
なお、3時間未満のランナーを区分する呼称は一般的に定着したものがないため、本稿では次のように定義しました。
- サブ3: 2:59:59~2:55:00
- サブ55: 2:54:59~2:50:00
- サブ50: 2:49:59~2:40:00
- サブ40: 2:39:59~2:30:00
- サブ30: 2:29:59以内
サブ3ランナーの完走タイム別割合(2016年) |
サブ3ランナーの完走タイム別人数(2016年) |
サブ3で完走するランナーのうち、半数近くは2時間55分~59分台に集中していることがわかりました。中でも58分~59分台が特に多いです。目標の達成に向けて、秒単位でペースを正確にコントロールしているのでしょう。
サブ3のうち2時間55分を切るのは約半数。2時間50分を切るのは、さらに約半数程度です。このレベルになると5分を縮めるだけでランナーが半減するほどの難しさがあります。
2時間40分を切れるのはサブ3ランナーの中でもたった6%。全完走者のうちサブ3が6%なので、平均的なランナーから見たサブ3と同じくらい厳しい世界です。さらに、2時間30分を切れるのはサブ3のうち1%。私のような凡人が目指すにはかなり険しい壁だと実感しました。
2015年大会との比較
今年のつくばマラソンは、昨年の2015年と比べてランナーのレベルが上がっているように感じました。そのため、昨年のデータと比較してみることにしました。
全完走者タイムの前年比較 |
外側が2016年、内側が2015年を表しています。2015年は4時間以内の完走者が44%でしたが、2016年は50%まで増加しており、サブ3からサブ4までのランナーが明確に増えている傾向があります。
サブ3の割合は4.4%から5.7%に増加しています。こちらの内訳も昨年と比較してみました。
サブ3ランナー完走タイム構成比の前年比較 |
構成比で比較するとサブ50(2時間40分~2時間50分)の割合が増加しています。
サブ3ランナー完走タイム別人数の前年比較 |
実人数で比較すると、2時間40分未満までは昨年とほぼ同数ですが、2時間40分以降のランナーが明確に増加しています。
「福岡国際マラソンの参加資格が昨年まで2時間40分以内だったが、今年から2時間35分以内に厳しくなったため、2時間35分~2時間40分のランナーがつくばマラソンに流入してきていたのではないか?」 と考えていましたが、この仮説を裏付けるデータにはなりませんでした。
増加しているのは2時間40分以降のランナーであるため、福岡国際はあまり関係せず、参加者の走力が上がってきているようです。
昨年のコンディションとの比較
昨年の天気は曇りで気温は涼しく、とても走りやすいコンディションだったので、私は自己ベストを大幅に更新することができました。
では、今年の大会はどうだったのでしょうか。数日前からの天気予報は晴れて気温が高くなる予報でしたが、当日は朝から霧で湿度は高いものの、霧や薄曇りで直射日光が緩和されたため、思ったほど厳しいコンディションにはなりませんでした。周りのランナーからも走りやすかったという声を聴きますが、私は暑さに対して極端に弱いため、30kmで体力が尽きてしまいました。
そこで、今年の完走者のうち、昨年も完走している人を昨年のタイムと比べて増減がどの程度だったのか調べてみました。方法は次のとおりです。
- 今年の完走者氏名を検索値にして、昨年完走者の氏名をvlookupで調べ、昨年の完走タイムを得る。同姓同名者の判別は不可能なので考慮しない。
- 検索範囲は、今年の完走タイムが3時間10分以内のランナーとする。それ以降のランナーの場合は、練習による伸びしろが大きく、昨年と比べて極端に早くなるようなケースも考えられる。というか自分に近い走力の人の傾向を調べたかったため。
3:10以内ランナーの昨年タイムとの比較 |
結果としては、昨年よりタイムを短縮したランナーが328人、遅くなったランナーが193人で、昨年よりもタイムを短縮できたランナーのほうが多く、走りやすいコンディションだったのではないかと思います。
昨年と比べてプラスマイナス0分付近にランナーの数が集中していますが、10分~20分程度短縮したランナーが多く、30分以上短縮したランナーも25人いました。
(もっとも、昨年から30分以上短縮したランナーは昨年のタイムが3時間20分~4時間程度のランナーが多く、練習による伸び盛りの可能性もあるため、最初の条件設定で昨年のタイムが3時間10分以内にしたほうがコンディション比較という趣旨に合っていました。今すぐやり直すのは面倒なので、後で時間があったらこのグラフは作り直すかもしれません。)
得た結論として、私が昨年と比べて20秒遅くなったのは気象条件のせいではなく自分のせいだとわかったので、精進する必要性を感じました。
スタートロスと走力の関係
つくばマラソンのAブロックは3時間30分以内の記録を持っているランナーが一律に配置されるため、ブロック内にキロ3分30秒から5分まで様々なペースのランナーが混在しており、後ろのほうに並ぶと最初の1kmは走りにくいように感じました。
そこで、スタートロス(ネットタイムとグロスタイムの差)と完走タイムの関係を調べてみました。条件は次のとおりです。
- Aブロックのランナーのみを対象にする。ウェーブスタートなので他のブロックも含めて比較することは困難。というか自分がAブロックなのでその中で起きていることを知りたかった。
- スタートから50秒以内にスタートラインを通過したランナーのみを対象とする。Aブロックのランナーは50秒で大半が通過しており、以降に通過した人は整列に間に合わず他のブロックに入っていたと考えられるため。
- 完走タイムはネットタイムで比較する。後方からスタートした人でもネットタイムであれば走力を反映しているため。
- 完走に4時間以上かかったランナーは除く。Aブロックになるには3時間30分以内の完走証を提出する必要があり、4時間以上かかった場合は故障などが考えられるため。
結果は次のとおりです。
スタートロスとネットタイムの分布(Aブロック) |
まず、スタートから0秒でスタートラインを通過した選手はいません。これは、号砲が定刻から1秒遅れていたものと推測されます。
また、ネットタイムの早いランナーほど前方に整列している傾向はありますが、それほど相関は強くなく、様々なタイムのランナーが混在して整列していることがわかりました。
この散布図は、走力を測定できるスカウターを装着して上空からAブロックの整列を眺めたような状態になっているため、列の様子がどのようになっていたのか知ることができました。
おわりに
以上、個人的な興味で調べたデータをご紹介しました。あまり役に立ちませんが、豆知識としてお楽しみ頂けましたら幸いです。
他に何か思いついたらこっそり加筆するかもしれません…。
結構こういう分析好きです。
返信削除アイさんも嫌いじゃ無さそうですね。
個人的に気になって調べたので、せっかくなので記事にしてみました。
削除つくばはサブ3、サブ4の区切りを目指すランナーが特に多いように思いました。時間があれば、サブ3がやたら多い気がする北海道マラソンも調べてみたいです。